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【C63 S E …
メルセデスAMG C63 S E Performance(F1 Edition)に乗っている筆者が、ある朝経験した“恐怖のフェイルセーフ”。
エンジン警告灯、ギアがPから動かない、ブレーキアシスト制限の警告――そしてアプリからの更新通知が止まらない。
結論から言うと、原因は「バッテリー上がり(12V系統の電圧低下)」でした。
この記事では、実際の経緯からディーラーの診断結果、アップデート対応までを詳細に解説します。
同じC63 S EやメルセデスPHEVに乗る方の参考になれば幸いです。
■ ある朝、突然動かなくなったC63 S E
前日までは普通に走っていたC63 S E。
その夜、いつものようにPHEV充電を実施。アプリ「Mercedes me」で充電の進捗を見ていたところ、充電開始・停止の通知が何度も繰り返し表示されました。
「電源が不安定なのかな?」と思いつつそのまま就寝。
そして翌朝、エンジンを始動すると…
- アクティブブレーキアシストが制限されます
- エンジン警告灯点灯
- シフトがPから動かない(ギアロック)
まったく動かず、完全にフェイルセーフモードへ移行。
電源を切っても復帰せず、再起動しても同じ状態。車内は静まり返っていました。

■ アプリ側では「リアルタイム更新」現象が続く
さらに気づいたのが、Mercedes meアプリの更新頻度が異常ということ。
通常なら、駐車中は30分〜1時間ごとに位置情報が更新されるはずですが、今回は1分単位で更新が続く。
つまり車が“スリープモードに入らず、常時通信を続けていた”状態です。
このとき、エンジンオフでも何かが動作し続けていた可能性が高く、結果的に12Vバッテリーが消耗していました。
■ ディーラー診断の結果:「12Vバッテリー上がり」と判明
ロードサービス経由でディーラーへ搬送。
診断の結果、原因は意外にも単純でした。
「12Vバッテリーが上がっていました。高圧バッテリー(HV)は正常ですが、補機系の電圧が不足して各モジュールが保護モードに入り、ギアがロックした状態です。」
さらに以下の症状が同時発生していたとのこと。
- スリープ遷移不良(通信モジュールが常時起動)
- OTA(オンラインソフト更新)条件未達
- フォルト履歴に電圧低下イベント
つまり、「充電通知が繰り返し→スリープできない→補機バッテリー放電→制御保護発動」という連鎖でした。
■ 修理内容:無償で12Vバッテリー交換+制御アップデート実施
登録から1年9か月、走行距離6,000km。
まだ新しい状態でしたが、メルセデスケア保証(3年)内ということで無償交換対象に。
| 内容 | 詳細 |
|---|---|
| 修理項目 | 12Vバッテリー交換 |
| ソフト更新 | BMS・OCU・通信制御ロジックアップデート |
| 費用 | 無償(保証対応) |
| 修理時間 | 約1日(チェック含む) |
同時に実施された「制御関連のアップデート」は、スリープ遷移ロジックや通信モジュール(OCU)の安定化が目的。
ディーラーによると「この世代ではまれにスリープに入れず通信しっぱなしになる事例があり、アップデートで改善されている」とのことでした。
■ OTAアップデートが「条件未達」で止まっていた理由
不具合発生前、車両画面に「ソフトウェア更新を実行できません。条件未達です。」と表示されていました。
この“条件未達”というのが、まさに12Vバッテリー電圧不足を指していたようです。
Mercedes-BenzのOTA(Over-the-Air)更新は、実行時にいくつかの条件を確認します:
- 12Vバッテリーの電圧が規定値以上(約12.4V〜)
- 通信モジュール(OCU)が安定通信中
- 車両が完全停止&スリープ遷移完了
今回は12Vが不安定+スリープできない状態だったため、OTA更新が自動的にブロックされていました。
つまり、アップデートできないこと自体が「電源系統の不調サイン」だったわけです。
■ バッテリー上がりで起きた3つの副作用
- フェイルセーフによるギアロック(P固定)
→ 電圧が下がるとシフト制御がロックされる安全設計。 - ブレーキアシスト制限警告
→ 電子制御ブレーキの電源供給が一時停止したため。 - ソフトウェア更新条件未達(OTA無効)
→ スリープ不良+低電圧によりアップデート不可状態に。
いずれも「安全を優先するための保護挙動」でした。
車両を守るための仕様とはいえ、突然動かなくなるのは驚きます。
■ 修理後の変化と改善点
ディーラーからの返却後、明らかに挙動が安定。
- アプリ更新が30分間隔に戻る
- SOC(充電残量)の減少が止まる
- OTA更新が正常に実行可能
- スリープ遷移が10分前後で完了
ディーラーいわく、「今回のアップデートでスリープ関連の不具合はほぼ解消されている」とのこと。
再現性が高かった現象なので、メルセデス側も対策ソフトをリリース済みと思われます。
■ 今後同じことを防ぐためにできること
C63 S E PerformanceをはじめとしたPHEVでは、12Vバッテリーが“電子制御の心臓”です。
以下の運用で再発を大幅に防げます。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 週1回・30分以上の走行 | BMSが学習し、充電サイクルが安定。 |
| 駐車時はダブルロック | 通信モジュールを強制スリープ。 |
| 週1リブート | MBUX+OCUの再起動で通信バグをリセット。 |
| 充電通知の異常を監視 | “開始/停止繰り返し”は放電サイン。 |
| トリクル充電の活用 | 長期駐車時の補助充電として有効。 |
■ まとめ:C63 S Eは繊細だが、原因を理解すれば怖くない
今回の一件で痛感したのは、C63 S E Performanceは電子制御の塊であり、12Vバッテリーが全ての要ということ。
不具合のトリガーは「電圧の一瞬の落ち込み」ですが、それを防ぐ方法は明確です。
- 充電通知の異常=初期サイン
- OTA「条件未達」=電源系不安定の警告
- フェイルセーフ=車を守るための設計
ディーラーでの迅速な無償交換と制御アップデートにより、現在は安定稼働中。
スリープ遷移不良やアプリ更新異常も解消されました。
C63 S E Performanceは手のかかるクルマですが、理解して付き合えば極めて高次元の完成度を誇る1台です。


